個タク開業準備手続について
※ 個タク開業ハンドブック:受講生の方は「開業の準備手続について」と「申請の挙証資料について」を1冊にまとめた冊子をダウンロードできます。
個人タクシーの試験を受けて合格し、譲渡を受けて開業するということは、いままで勤めていた会社を退職して個人事業主となるということですから、適用される社会保険制度が変わってきますし、社会的信用にも変化が生じます。
そこで、このページでは、新規事業者になるに際してしなければならない手続やお得な制度などについてのポイントを紹介します。
1 健康保険制度について
健康保険の制度については、会社員が加入する健康保険(社保)と自営業者が加入する国民健康保険(国保)とがあります。健康保険(社保)は全国健康保険協会(協会けんぽ)または健康保険組合が運営しています。これに対し、国民健康保険(国保)は市区町村が運営しています。
個人タクシーを開業する場合はいままで勤めていた会社を退職することになりますから、健康保険(社保)から国民健康保険(国保)へと切り替えをする必要があります。国民健康保険(国保)への切替手続は、退職した日から14日以内に市役所・区役所で行います。必要となるのは「社会保険の資格喪失証明書」または「雇用保険の離職票」と「マイナンバーカード」などですが、各市・区ごとに異なりますので、お住いの市役所・区役所へ問い合わせてください。
社保と国保とでは、保険料の計算方法が異なりますから、人によっては、国保に切り替えると保険料が上がるケースがあります。そのような場合は、健康保険の任意継続といって、退職後2年の間だけ退職前の会社の健康保険(社保)に加入し続けることができる制度が設けられています。どちらが得かよく調べてから手続をしましょう。とはいえ、任意継続の手続は退職後20日以内にしなければならない上に、この期限は遅れると任意継続を一切することができなくなるので、早急に検討するように注意しましょう。
なお、会社員の場合は会社が保険料を半額払ってくれていましたが、開業後は全額個人負担となります。これは任意継続の場合も同じで会社が半額払ってくれるわけではありません。
2 年金制度について
会社を退職して開業することにより、厚生年金から国民年金へと切り替えをする必要があります。厚生年金は基礎年金の部分と上乗せ部分のいわゆる2階建でしたが、国民年金は基礎年金だけです。そこで、将来、会社に在籍して厚生年金を掛け続けた場合と同等の年金給付を受けようと思ったら(民間の年金保険でも構いませんが、)国民年金基金を掛けることになります。国民年金基金の掛金の上限は月額6万8,000円です。
なお、会社員の場合は会社が掛金を半額払ってくれていましたが、開業後は全額個人負担となります。
国民年金基金のメリットは、掛金の全額が所得控除の対象となるということです(社会保険料控除)。所得税などの計算において、売上高から国民年金基金の掛金を差っ引いてよいということなので、納める税金等を抑えることができます。
※ 国民年金基金への加入手続は第一事業団で行うことができますので、各支部の窓口へお問い合わせください。
3 小規模企業共済について
会社に一定期間勤めた後に退職すると退職金をもらえる場合があります。しかし、個人事業主には退職金はありません。そこで、フリーランスの退職金のための制度として用意されたのが小規模企業共済です。掛金の上限は月額7万円です。個人事業主が事業を廃業した場合に退職金代わりに給付を受け取ることができます。給付を受けられるのは基本的に廃業する場合のみですが、貸付を受けることが可能となります。
小規模企業共済のメリットは、国民年金基金と同様に、掛金の全額が所得控除の対象となるということです(小規模企業共済等掛金控除)。所得税などの計算において、売上高から小規模企業共済の掛金を差っ引いてよいということなので、納める税金等を抑えることができます。
なお、小規模企業共済の掛金を途中で減額すると、以後の減額前の積立額についての運用益に当たる部分について不利益となりますので、無理のない額で掛けるようにしましょう。
※ 小規模企業共済への加入手続は第一事業団で行うことができますので、各支部の窓口へお問い合わせください。
4 有給休暇の消化について
私たちの職種は自動車を運転しなければなりませんから、譲渡譲受の申請をして認可が下りるまでの間に事故や違反があれば全てが水の泡となってしまします。少しでもハンドルを握る機会を減らしたいものです。そこで、現在勤めている会社を退職するまでに、残っている有給休暇を消化してハンドル時間を減らすようにしましょう。
有給休暇の付与日数は、勤続年数によって変わりますが、6年6ヶ月以上勤務している場合には年間に20日付与され、翌年まで繰り越せますので、使っていなければ最大で40日、隔勤なら20出番の休暇を取ることができます。
会社によっては有給休暇の使用を制限しているところもありますが、有給休暇は労働者の権利であって、有給休暇を使用する際には会社に申請すれば足り、会社の承諾がなくても発生するものなのです。とはいえ、勤めていた会社はなるべくなら円満退社したいですから、管理者とよく話し合って有給を消化させてもらいましょう。
5 失業手当と再就職手当について
有給休暇を消化して、会社を退職すると無職になりますので、失業保険の失業手当と再就職手当の給付をもらえるかを検討する余地があります。
6 クレジットカードについて
会社を退職して個人タクシー事業者になると、勤続年数がゼロになりますし、所得自体も給与所得から事業所得へと変化しますので、しばらくはクレジットカードが作りにくくなります。そこで、必要なクレジットカードは退職前に作っておいた方がいいでしょう。ガソリン用のカードやETCカードなどをゲットしておくと開業後も有効に使用できます。
ただし、一気に大量の申込みをすると、多重申込みといって、カード会社から「この人は資金繰りに困っているのではないか?」と警戒されカードの発行を拒否される可能性が高くなりますので、ご注意ください。
7 日個連ETCカードとNiKoRiカードについて
事業用自動車の名義変更が終了すると、日個連ETCカードの申込みができます。日個連のETCカードは、利用状況によって年に数回キャッシュバックがあります。しかも還元率が非常に高いので、高速利用の多い営業形態の方にはお得です。
なお、日個連ETCカードの発行は即日ではなく最長で1か月程度の時間がかかりますので、あらかじめ、日個連ETCカードが発行されるまでの間に使用できるETCカードを用意しておきましょう。
また、提携スタンド(出光の一部)にて燃料を低額で入れることができる現金用のNiKoRiカードもあります。こちらも利用状況によって年に数回キャッシュバックがあります。
8 給油スタンド・洗車場の検討について
個人タクシー事業者になったら、どこで燃料を入れるか、どこで洗車をするかなど、各自が自由に決めることができます。
開業前から燃料を入れることとなる近所のスタンドの価格を調べたりしておくとよいでしょう。同様に、洗車についても、自宅で洗うのか、タクシー洗車をしてくれる店に依頼するのか、依頼するとしたら、どこに洗車をしてくれる店があるかなどもチェックしておきましょう。
利用するスタンドごとに、どのようなカードを作っておいた方がいいのかも変わってきます。
9 ドライブレコーダーについて
現在、自動車の運転を職業とする者にとっては、自己の身を護るためにドライブレコーダーの装着が必須となっています。万が一、重大な人身事故が発生しても、ドライブレコーダーの映像によって相手方の一方的な過失が証明されて、責任を問われなかったケースなどもあるのです。
そこで、譲渡を受けた事業用自動車がドライブレコーダーを装着していれば、そのドライブレコーダーを使用することができますが、未装着であった場合には、早急に購入を検討する必要があります。
機種の選定に当たっては、録画時間・解像度などのほか、旅客営業車ゆえに室内の撮影ができるかも大きなポイントとなります。
日個連の指定機種もありますので、各支部で相談してみましょう。ドライブレコーダーを2台装着している事業者もいらっしゃいます。
10 両替について
個人タクシーを開業すると、釣銭用の小銭も自分で用意する必要があります。
両替については、大手都市銀行のうち三井住友銀行は、キャッシュカードがあれば1日1回500枚まで両替機が無料で使えます。りそな銀行と埼玉りそな銀行は200枚まで無料です。これに対し、みずほ銀行と三菱UFJ銀行は10枚までなので両替には不向きです。
また、窓口で口座から出金する際に、金種を指定する方法もあります。
どの程度用意しておくのがいいでしょうか?
まず100円硬貨を2本=100枚、50円硬貨を2本=100枚および10円硬貨を2本=100枚ずつ準備して、それぞれ1本=50枚をスペアとして保管しておくのがオススメです。そして、各硬貨とも1本=50枚を下回ったら補充のために1本=50枚ずつ両替していくのがよいでしょう。
500円硬貨については10枚から20枚くらい準備し5枚を下回ったら補充すれば十分です。
1,000円札は最初に20枚から30枚くらい準備しておけば増えていくと思います。
5,000円札も数枚から10枚くらいあれば十分です。